日本版『NCDs(非感染性疾患)白書』を発表
―8領域11名の専門医との協力による日本のNCDs対策の提言書―
ヴィアトリス製薬株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ソナ・キム)は、この度、日本におけるNCDs(Non-Communicable Diseases: 非感染性疾患)1 の現状・課題・対策について包括的にまとめた『NCDs白書 -誰もが健康で、長生きできる社会を目指して』を発表しました。本白書は、NCDsに関連する各疾患領域の専門医11名の協力のもと、制作されました。
NCDsとは、Non-Communicable
Diseasesの略称で、循環器疾患(心筋梗塞、脳卒中等)、がん、慢性呼吸器疾患(COPD、喘息等)、糖尿病、メンタルヘルスなどの「感染性ではない」慢性疾患に対する総称です。日本における死因および疾病負担ともに8割以上がNCDsに起因すると報告されており2,3、世界に先駆けて少子高齢化が進む日本においては、生産労働人口の減少といった経済的な影響を考慮すると、すべての世代でNCDsを適切に予防し管理することが、社会経済的にも重要な課題と考えられます。
加えて、昨今では、新型コロナウイルス感染症の流行が社会に対して大きな影響を与えたことは周知の事実ですが、特に高齢者、基礎疾患やリスクファクター(肥満、糖尿病、心血管疾患、呼吸器疾患、喫煙歴、がんなど)のある患者さんにおいて、新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡のリスクが高くなることが報告され、NCDsの予防と管理の重要性がより一層高まっていると言えます。
NCDs‐多疾患併存に伴う医療課題への対策
近年、多疾患併存(マルチモビディティ)という概念が注目されています。マルチモビディティとは、2型糖尿病、慢性心不全、骨粗鬆症、認知症、うつ病、緑内障、変形性膝関節症のような慢性疾患を2つ以上有する状態を指す言葉で、加齢とともに増加し、日本の18歳以上の29.9%、65歳以上の62.8%が該当すると報告されています4。マルチモビディティでは、専門領域ごとに診療が分断することで、ポリファーマシー(単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態5)、受診・入院の増加、高い医療費などによる患者さんの治療負担増大に加えて、総死亡率の増加やQOLの低下につながることが報告されています6,7。今後、日本で、高齢化がさらに進行することを考慮すると、疾患同士の関連性や処方薬剤の他疾患への影響を把握しつつ、複数のNCDsを総合的に管理してくことが求められます。
NCDs白書‐多領域の専門家の意見を反映したNCDsの予防と管理に関する提言書
ヴィアトリスは、非感染性疾患と感染症の両方にわたる広範な疾患領域をカバーする医薬品を有し、これらを医療現場に供給することを通じて、NCDsの予防と管理に貢献することを目指しています。日本ではメディカル・アフェアーズが中心となり、医療現場におけるNCDsの疾患教育・啓発を目的として関連領域の専門家と連携しながら活動を行ってきました。その活動の一環である本白書では、各専門領域の専門医のアドバイスと現状の科学的エビデンスに基づき、日本におけるNCDsの予防と管理に関する現状と課題をまとめ、今後の方向性に対して下記の提言を行っています。
- NCDsの多疾患併存に関する研究の推進と普及
- 医療機関ごとに管理されている患者情報の連結
- NCDs診療の中心となるプライマリ・ケア医やメディカルスタッフの養成及びプライマリ・ケア医向けガイドブックの作成
- 一般市民・患者に対する疾患啓発・健康教育
本白書は、かかりつけ医(プライマリ・ケア医)及びメディカルスタッフを主な読者として作成しました。少子高齢化の進むこれからの日本では、プライマリ・ケア医やメディカルスタッフがNCDs診療の中心となるような新たなシステムの構築が必要と考えるからです。加えて、NCDsを総合的に予防・管理し、健康寿命の延伸を実現するためには、医療を取り巻くステークホルダーであるアカデミア、企業、政府の連携が不可欠です。これらのステークホルダーにも本白書を参照いただき、NCDsに関する理解を深めるとともに日本の医療課題を見直すきっかけを提供できればと願っています。
ヴィアトリス製薬株式会社
代表取締役社長のソナ・キムは、次のように述べています。
ヴィアトリスのミッション「私たちは人生のあらゆるステージで、世界中の人々のより健康な生活に貢献します。」に基づき、ヴィアトリス・ジャパンでは、新たなエビデンスの創出、かかりつけ医やメディカルスタッフ、NCDsを抱える人への情報提供を通じて、「包括的なNCDsの予防と管理を支援するために関連組織と協力して取り組むこと」にフォーカスします。そして、日本のすべての人のヘルスケア課題の解決に貢献することに引き続き務めてまいります。
NCDs白書は、ヴィアトリス製薬株式会社の医療従者向けホームページ(Viatris e Channel)もしくは、コーポレートサイト(日本におけるヴィアトリス)に公開されています。NCDs白書の全文はこちらのリンク(https://www.viatris.com/-/media/project/common/viatris/pdf/japan/viatris_japan_ncds_white_paper_final.pdf)より参照ください。
【NCDs(非感染性疾患;Non-communicable
Diseases)とは】
一般に慢性疾患と呼ばれ、遺伝的要因、生理的要因、環境要因、行動要因の組み合わせの結果生じる疾患のことを指します1。例えば、循環器疾患(心筋梗塞、脳卒中)、がん、慢性呼吸器疾患(COPDや喘息)、糖尿病、メンタルヘルスなどの「感染性ではない」疾患に対する総称です。2015年の「国連持続可能な開発サミット」において加盟国の全会一致で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」の目標3.4では、「2030年までに、非感染性疾患(NCDs)による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1に減少させ、精神保健及び福祉を促進する」という目標が設定されています8。つまり、NCDsは、貧困や飢餓、エネルギー問題、気候変動による自然災害の増加などと共に、世界各国が持続可能な発展を続けていくために取り組むべき問題であると認識されています。
【NCDs白書制作協力者一覧(五十音順・敬称略)*】
相原 一 東京大学 眼科学 教授
井上 猛 東京医科大学 精神医学分野 主任教授
緒方晴彦 慶應義塾大学 内視鏡センター 教授・センター長
草場鉄周 北海道家庭医療学センター 理事長
小池和彦 関東中央病院 病院長(東京大学消化器内科学名誉教授)
小室一成 東京大学 循環器内科学 教授
筒井裕之 九州大学 循環器内科学 教授
中澤 徹 東北大学 眼科学 教授
矢吹省司 福島県立医科大学 保健科学部 学部長
山内敏正 東京大学 糖尿病・代謝内科学 教授
横山彰仁 高知大学 呼吸器・アレルギー内科学 教授
*本白書の提言内容は、制作協力者の先生方との議論を元にヴィアトリス製薬株式会社が取りまとめたものであり、特定の個人あるいは他の組織の意見を代表するものではございません。
【ヴィアトリスについて】
ヴィアトリスは、世界中の誰もが、人生のあらゆるステージで、より健康に生きられるよう貢献する、グローバル規模の製薬会社です。持続可能なオペレーションを促進し、革新的なソリューションを開発します。また、蓄積された専門知識を活かし、当社独自のGlobal
Healthcare
Gateway™を通じて、より多くの人びとにより多くの製品とサービスをお届けします。2020年11月に誕生したヴィアトリスは、サイエンス、製造、流通における専門的知識とメディカル、薬事、コマーシャル分野の実績ある能力を結集し、165を超える国と地域の患者さんに高品質な医薬品をお届けしてまいります。ヴィアトリスは、非感染性疾患と感染症にわたる広範な治療領域に1,400種類以上の医薬品を有しています。当社のグローバル・ポートフォリオは、著名なグローバルブランド医薬品、コンプレックス・ジェネリック医薬品、一般用医薬品などで構成されています。ヴィアトリスは全世界に約37,000人の従業員を擁し、米国に本社を置き、ペンシルベニア州ピッツバーグ、中国上海、インドのハイデラバードにグローバルセンターを有しています。詳細については、viatris.comおよびinvestor.viatris.com、Twitter(@ViatrisInc)、LinkedIn、YouTubeをご覧ください。
日本においては、ヴィアトリス製薬株式会社、ファイザーUPJ合同会社、マイランEPD合同会社、マイラン製薬株式会社の4法人が、ヴィアトリス・ジャパングループとして事業を展開しています。
参考資料
- WHO. Noncommunicable diseases. Accessed Apr.1,
2022.
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/noncommunicable-diseases - WHO. Noncommunicable diseases country profiles 2018. Accessed 7th, Dec,
2022.
https://apps.who.int/iris/handle/10665/274512 - Data OWi. Total disease burden by cause, Japan, 1990 to 2019. Accessed 7th, Dec,
2022.
https://ourworldindata.org/grapher/total-disease-burden-by-cause?stackMode=relative&country=~JPN - Aoki T, Yamamoto Y, Ikenoue T, Onishi Y, Fukuhara S. Multimorbidity patterns in relation to polypharmacy and dosage frequency: a nationwide, cross-sectional study in a Japanese population. Sci Rep. Feb 28 2018;8(1):3806. doi:10.1038/s41598-018-21917-6
- 厚生労働省. 高齢者の医薬品適正使用の指針(総集編). Accessed Apr.1,
2022.
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11125000-Iyakushokuhinkyoku-Anzentaisakuka/0000209385.pdf - Wallace E, Salisbury C, Guthrie B, Lewis C, Fahey T, Smith SM. Managing patients with multimorbidity in primary care. BMJ. Jan 20 2015;350:h176. doi:10.1136/bmj.h176
- Nunes BP, Flores TR, Mielke GI, Thumé E, Facchini LA. Multimorbidity and mortality in older adults: A
systematic review and meta-analysis. Arch Gerontol Geriatr. Nov-Dec
2016;67:130-8.
doi:10.1016/j.archger.2016.07.008 - Nations U. Resolution adopted by the General Assembly on 6 July 2017. Accessed 7th, Dec,
2022.
https://ggim.un.org/documents/a_res_71_313.pdf